東京高等裁判所 昭和24年(を)3210号 判決
弁護人の控訴趣意は別紙書面のとおりであつて、これに対し次のように判断する。
犯罪後これに関する法令の改正が行われた場合において、その改正が当該規範そのものの変更を含む限り、刑法第六条の場合を除いて新法を適用すべきものでないことは明らかである。しかしその改正が当該規範そのものに関係なく、単なる条文の序列の変更や文体或いは表現方法の変更乃至は同一条文中の他の別個の規範の加除に過ぎないものであるときは、その内容である当該規範そのものについては実は新旧同一であつて何等変更はなかつたわけである。従つてこの後の場合に当該法令を判決に示すに当つて、これを新法で掲げてもそれはただ行為時法の実質を裁判時法の形で表わしたに過ぎないものであつて、もとより適法であり、たとい限時的規定の場合であつてもこれを以て特に違法となすべき性質のことがらではないわけである。
食糧管理法施行規則第二三条の規定が昭和二四年六月二五日農令第五七号によつて改正せられたものであることは所論のとおりである。しかしこれをつぶさに観るのに、右の改正前の同条も亦同種の事項を規定していたのであつて、右改正はただ従来の「売り渡し」に「譲り渡し」を加え、その他若干の表現上の整理を行つたに過ぎないものであることが認められる。即ち米麦等又はでん粉の所有者(新法が何人もという表現に改めていてもそれが従前同様所有者を指すものであることは同条が食糧管理法施行令第八条に基くものであることによつて十分に窺われる。)がその所有する米麦等又はでん粉を所定の除外事由なく政府又は食糧公団以外の者に売り渡すことを禁ずる点においては新旧少しの変更もなされてはいないわけである。従つてかかる事案に適用する場合である限り、右の規範を示すのに新法の形をもつてすることは前述のようにもとより適法であつて、同規則が限時的規定であるからといつて、特にこれを違法としなければならない理は何もないわけである。
(下略)